製品ライフサイクル(Product Life Cycle)とは、製品には寿命があり、また製品がたどる段階を売上や利益の動きから4つ(または5つ)に分類することができるという考え方です。
それぞれの段階の特徴を把握し、適切な経営戦略を立てることで、売上・利益を最大化することができます。
今回は、製品ライフサイクルの4つの段階について、それぞれの特徴やその時期に取るべき戦略などについてまとめてみたいと思います。
【Product Life Cycle】製品ライフサイクル4つの局面【特徴と戦略】
製品ライフサイクルでは、製品には
- 導入期
- 成長期
- 成熟期
- 衰退期
の4つの段階があると考えます。
上図と合わせ、それぞれの段階の特徴と取るべき戦略について確認していきましょう。
導入期
製品が生み出され、市場に送り出されてすぐの段階です。
まだ顧客に製品の存在自体が知られていないため、認知向上と試用の促進を目的としてマーケティング戦略を考えます。
スーパーで見かける試食や、化粧品などの試供品(無料サンプル)などをイメージしてもらえたらと思います。
導入期における中心的な購入者は、イノベーター(革新者)やアーリー・アダプター(初期採用者)です。
イノベーターは好奇心が強く、新しいものを積極的に取り入れようとし、また製品の性能云々よりも「他より先んじて手に入れること」を重視する傾向があります。
アーリー・アダプターはトレンド(流行)に敏感で、自分が「良い」と判断したものは積極的に取り入れます。
また早い段階から製品を取り入れるため、オピニオン・リーダー(世論先導者)として他の購入者層に対して強い影響力を発揮します。
昨今話題になっているインフルエンサーと呼ばれる人たちも、アーリー・アダプターに分類されます。
なおマーケティング戦略としては、先ほど言ったように試供品を利用したりプロモーションに力を入れるので、概して費用が高くなります。
そのため、ほとんどの製品においては赤字状態が続くことになります。
成長期
製品の認知・普及が進み、急速に売上が伸びる段階です。
市場の成長率が高いため、新規参入が増え競争が激化します。
成長期における中心的な購入者はアーリー・アダプターとアーリー・マジョリティー(前期追随者)です。
アーリー・マジョリティーはアーリー・アダプターに比べて慎重であるものの、新しいものを取り入れるのが平均よりも早いです。
また製品を購入するかの判断にアーリー・アダプターの意見を参考にする傾向があります。
成長期においては市場が急速に大きくなっていくため、その中でいかにシェアを拡大していくかがキーポイントになります。
そのため生産量を増やすための設備投資、流通経路の拡大のほか、品質向上や付随サービスの充実を図っていく必要があります。
成長期は売上が増加しますが、それに比例して広告や設備投資などで出ていく分も多いので、売上のわりに利益が伸びづらい傾向があります。
成熟期
製品の普及がひと段落し、市場の成長が停滞する時期です。
市場内でのシェアが固定化し、新規参入が少なくなり、シェア獲得に失敗して撤退する企業も出てきます。
成熟期における中心的な購入者はレイト・マジョリティー(後期追随者)とラガード(遅滞者)です。
レイト・マジョリティーはアーリー・マジョリティーに比べて用心深く、新しいものに対して消極的です。
大多数が「良い」と判断してからそれに追随するため、行動が遅くなる傾向があります。
またラガードはもっとも保守的で、トレンドを気にしません。
製品が普及して、なおかつ自分が「良い」と判断したものでなければ購買行動は起こしません。
そのため、不要と判断すれば最後まで購入しない人もいます。
成熟期においては、いかにシェアを維持し利益を最大化するかが重要になります。
新規需要が見込めないため、買い替え需要の刺激やリマインド広告の運用によって既存顧客にアプローチしていくことになります。
またブランディングによる差別化や、製品ラインナップの拡充によって顧客の選択肢を拡げるという戦略が取られることもあります。
衰退期
代替製品の出現などにより、売上・利益ともに減少し市場が縮小していく段階です。
スマホの普及でコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)が売れなくなったケースをイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。
衰退期における中心的な購入者はラガードです。
ラガードはトレンドに無頓着で、自分が「良い」と思ったものを購入します。
上のコンデジの例で言えば、コンデジよりもコンパクトで手軽に写真を撮れるスマホがあったとしても、コンデジが好きだから買うという層です。
市場が縮小していく衰退期には、多くの企業が撤退していきます。
そのため撤退をにらんで収穫戦略を取るか、居座って残存者利益を狙うかを考える必要があります。
撤退戦略で行く場合、コストを抑える目的で
- 新規の設備投資を控える
- メンテナンス費用を抑える
- 大々的なプロモーションはしない
- 流通経路の限定
- 製品ラインナップの絞り込み
- 付随サービスの打ち切り
などの方策が取られます。
とはいえ、目的は利益を最大限維持しながら段階的にコストを下げていくことですので、まったく投資をしないということではありません。
植物を育てるときをイメージすると分かりやすいですが、苗木から成木に育てるまでには、水や肥料をあげたり、害虫を駆除する必要があるます。
そして樹木が実をつけ収穫の時期になったときも、より多く・大きくなるようにメンテナンスをします。
製品の衰退期も同じことが言え、収穫量(利益)を最大化するために必要なコストは掛けることが重要です。
まとめ
以上、製品ライフサイクル4つの段階と、それぞれの特徴や取るべき戦略についてまとめてみました。
製品も人間や植物と同じように、はじめにコストをかけて育てることで、将来的により多くの成果をもたらしてくれます。
導入期の段階では赤字状態が続くことになりますが、各段階の特徴と取るべき戦略を抑えておくことで、必要なコストをケチって製品の成長を阻害してしまうリスクを減らすことができます。
なおWebをうまく活用することで、導入期~成長期のプロモーション費用を抑え、成熟期以降のシェア獲得を有利に進めることができます。
もちろんそのためにはノウハウや戦略が必要となりますが、確実に言えることは、導入が早いほど将来のリターンが大きくなるということです。
もし「まだ」という人は、早めの導入を検討してみましょう。