画家・アーティストのマーケティング戦略|ステップ 3 : 信頼の受け皿を作る
SNSで作品を知ってもらい、世界観に興味を持ってもらったら、次に必要なのが「信頼」です。
ステップ1では「知ってもらう」、ステップ2では「世界観に興味を持ってもらう」。
そしてステップ3では、その興味を「このアーティストから購入して大丈夫」という安心感へ変えていきます。
そのために重要な役割を果たすのが、ポートフォリオサイトです。
SNSは作品や制作過程と出会う場所です。
一方、ポートフォリオサイトは、アーティストの活動を体系的に知り、次の行動を判断する場所です。
つまり、
- SNS:出会う場所
- ポートフォリオサイト:関係を築く場所
と考えると分かりやすいでしょう。
なぜ「信頼」が必要なのか
アートは、日用品や一般的なEC商品とは異なります。
特に数万円、数十万円、あるいはそれ以上の作品を購入する場合、購入者は作品だけを見て判断するわけではありません。
- 「誰が作っているのか」
- 「どのような活動をしているのか」
- 「どのような作品を作ってきたのか」
- 「どこで展示してきたのか」
- 「今後も活動を続けていくのか」
- 「作品を安心して購入できるのか」
といった情報を確認します。
つまり、高額な作品ほど、「この作品が好き」だけではなく、
「このアーティストから購入して大丈夫だ」
という安心感が必要になります。
ポートフォリオサイトには、こうした購入前の不安を解消する役割があります。
SNSとポートフォリオサイトの役割
SNSとWebサイトは、それぞれに明確な役割を持たせることが重要です。
SNSを運用する目的は、「もっと見たい」と思ってもらうことです。
- 作品
- 制作過程
- 日常
- 思想
- 新作
- 展示情報
などを投稿し、アーティストへの興味を深めてもらいます。
一方、ポートフォリオサイトの目的は、「アーティストについて詳しく知ってもらい、安心して次の行動に進める状態」を作ることです。
そのため、
- プロフィール
- アーティストステートメント
- 作品一覧
- シリーズ作品紹介
- 最新の展示
- 新着情報
- お問い合わせ
などを整理して掲載します。
最初はシンプルなサイトで十分
最初から複雑なWebサイトを作る必要はありません。
まずは、アーティストについて知り、作品や活動を理解できる基本的な構成を整えます。
トップページ
トップページでは、アーティストの世界観を最初に伝えます。
- 代表作品
- アーティスト名
- コンセプト
- 最新シリーズ
- 最新展示
などを見せ、訪問者が数秒見ただけでも、「誰の、どんなWebサイトなのか」が分かる状態を目指します。
プロフィール
プロフィールは、単なる履歴書ではありません。
「この人はどのような背景を持ち、何を制作しているのか」を伝えるページとして整理します。
例えば、以下のような情報です。
- 名前
- 生年
- 活動拠点
- 制作ジャンル
- 学歴
- 制作テーマ
- 主な活動
- 展示歴
- 受賞歴
- 所属ギャラリー
ただし、初期段階で実績が少なくても問題ありません。
無理に実績を増やすのではなく、現在何を制作し、どのようなテーマを追求しているのかを明確にすることが重要です。
アーティストステートメント
アーティストステートメントは、「自分は何を表現しているのか」を説明するページです。
ステップ2で発信してきた世界観を、より体系的にまとめます。
例えば、
私は都市の中で生まれる、人と人との距離や記憶をテーマに絵画を制作しています。
というテーマから始め、
- なぜこのテーマを扱うのか
- 何を観察しているのか
- どのような方法で表現するのか
- 作品を通じて何を問いかけたいのか
を説明します。
ここで重要なのは、難しい言葉を使うことではありません。「このアーティストが何を考えて制作しているのか」が伝わることです。
作品一覧を「作品倉庫」にしない
ポートフォリオサイトで特に重要なのが作品一覧です。
ただ作品画像を大量に並べればよいわけではありません。
作品を整理し、見る人がアーティストの活動を理解できるようにします。
例えば、シリーズやモチーフ単位で作品をカテゴリー分けして整理します。
そうすることで、「このアーティストは、どのようなテーマを継続的に探求しているのか」が見えてきます。
作品紹介ページには、できるだけ詳しく情報を掲載する
作品紹介ページには、可能な範囲で基本情報を掲載します。
例えば、以下のような情報です。
- 作品タイトル
- 制作年
- 素材
- サイズ
- シリーズ名
- ステータス(販売中/売り切れ)
さらに可能であれば、
- 作品のコンセプト
- 制作背景
- 展示歴
- 詳細写真
- 設置イメージ
なども掲載します。
詳細写真では、接写で質感や繊細な描写を見せたり、設置イメージでは、実際に飾ったときの雰囲気を伝えます。
特に購入を検討している人にとっては、「実際に購入したらどのような作品なのか」を想像できる情報が重要です。
売り切れ作品もアーカイブする
販売済み作品は削除してしまうのではなく、「売り切れ」としてアーカイブすることも検討します。
過去に売れた作品をフィルタリングして、一覧表示できるようにしておくと、「過去に作品を購入している人がいる」という事実を示せると同時に、過去の制作活動をアーカイブとして残すことにもつながります。
ただし、購入者の個人情報や非公開情報は掲載しないよう注意しましょう。
展示歴で「活動の証拠」を見せる
展示歴は、単なる経歴ではありません。
「このアーティストは実際に活動している」という実績を示す重要な情報です。
- 個展
- グループ展
- 国内展示
- 海外展示
などに分類して整理すると、活動内容を把握しやすくなります。
可能であれば、
- 展示写真
- 会場写真
- 展示作品
- 展示風景
- ギャラリー名
- 開催年
なども掲載します。
SNSで「個展をしました」と発信するだけでなく、Webサイトに記録として残すことで、活動の信頼性を高められます。
第三者の評価を掲載する
アーティスト自身が「私は素晴らしいアーティストです」と言っても、それだけでは信頼性は高まりません。
そこで重要になるのが、第三者からの評価です。
例えば、以下のようなものです。
- ギャラリーでの常設展示
- キュレーターからの推薦
- 美術館・文化施設での展示
- アートフェアでのつながり
- メディアへの掲載歴
- コンペティション等の受賞歴
- コレクターからの支持
- 他のアーティストからの声
まだ実績が少ない場合、無理に権威付けをする必要はありません。
むやみに大きく見せるより、これからどのような活動を積み重ねていくかの方が重要です。
購入までの導線を明確にしておく
作家によっては、ギャラリーやディーラーを介さないと作品を購入できないケースもあります。
そのため、ポートフォリオサイトでは「購入できる」ということが伝わる構成にしておくことも重要です。
可能であれば、以下のような情報を掲載します。
- 作品価格
- 購入方法
- 支払い方法
- 配送方法
- 額装の有無
- 証明書の有無
- 返品・キャンセルに関する案内
- 問い合わせ先
ただし、取引しているギャラリーとの関係性や作家としてのブランディングにも関わるため、無理にすべて公開する必要はありません。
価格などを記載することが難しい場合は、「価格はお問い合わせください」と記載しておくだけでも、購入を検討するきっかけになります。
価格を問い合わせ制にする場合は、問い合わせ先を明確にしておくことも忘れずに。
高額作品の場合、購入者が最後に知りたいのは、「この作品をどうすれば購入できるのか?」ということです。
ここが曖昧だと、購入意欲があっても離脱してしまいます。
お問い合わせページは「窓口」として設計する
お問い合わせページは、単に「お問い合わせはこちら」とするだけではなく、問い合わせ目的を選べるようにするとよいでしょう。
例えば、
- 作品購入について
- 展示について
- コラボレーションについて
- 取材について
- ギャラリー・ディーラーからの問い合わせ
などです。
こうすることで、こちらの管理もしやすくなりますし、問い合わせする人にとっても連絡する心理的ハードルを下げることができます。
特にアーティストの場合、購入者だけでなく、ギャラリー、キュレーター、メディア、企業などからの問い合わせも、将来的な活動につながります。
最新情報を継続的に発信する
ポートフォリオサイトが何年も更新されていないと、「このアーティストは今も活動しているのだろうか?」という疑問を持たれてしまいます。
そのため、WordPressなどのブログ機能を導入し、以下のような情報を継続的に発信していきます。
- 新作発表
- 個展・グループ展などの開催のお知らせ
- アートフェア
- メディア掲載
- 受賞
- 新しいシリーズの発表
- 販売情報
SNSでの情報発信も大切ですが、SNSの投稿は時間とともに埋もれていきます。
一方、Webサイトで新着情報をアーカイブしていけば、活動の履歴として時間とともに蓄積されていきます。
それが、アーティストとしての信頼性を醸成することにつながります。