アウトソーシング(外部委託)とは、自社の業務を外部の専門業者に委託することです。
世の中の会社で、すべての業務を自社で完結しているところはほとんどありません。
よくあるケースだと、商品の配送をヤマト運輸や佐川急便に依頼したり、ITシステムの開発・運営をシステム会社に委託したりというものですね。
とはいえアウトソーシングにはメリットもあれば、注意しておきたいデメリットもあります。
今回は、中小企業がアウトソーシングするメリットとデメリットについてまとめてみたいと思います。
アウトソーシングのメリット
中小企業がアウトソーシングすることには、以下のようなメリットが考えられます。
コアコンピタンスに集中できる
他社が真似しづらい独特の強みのことを「コアコンピタンス」と言いますが、重要度の低い業務をアウトソーシングすることでコアコンピタンスに集中できるようになります。
中小企業や個人事業主の経営資源には限りがあります。
すべての業務を自社のリソースで賄っていれば、重要度の高い業務を強化していくことが難しくなります。
自社のコアコンピタンスに関連がなく、かつ専門業者に委託した方が顧客の満足度が高くなる業務に関しては、積極的にアウトソーシングを検討した方がいいでしょう。
そういう意味でも、冒頭で紹介したような配送業者やシステム会社へアウトソーシングするケースは多いと言えます。
自社でゼロから流通網を構築するにはかなりのコストがかかりますし、システム開発や保守・運営ノウハウがない会社だったら、人材の育成から始めなくてはいけないため、金銭的なものだけでなく人的・時間的コストもかかります。
そうした自社にノウハウやリソースがない業務を、高い専門性やリソースを持っている業者に丸ごと委託することで、自社の競争力にかかわる重要度の高い業務に注力できるわけです。
技術・ノウハウのない分野にも参入できる
上で専門性の高い業者に依頼することでコアコンピタンスに集中できると言いましたが、専門業者にアウトソーシングすることで、自社に技術・ノウハウがない分野にも参入することが可能になります。
たとえばWeb制作業界では、自社は案件獲得に専念して制作は丸ごとアウトソーシングしているという会社も結構あります。
そういう会社はもともと別の商材を取り扱っていたりして営業ノウハウがあり、顧客とのコミュニケーションの中でサイト制作の要望が出たことをきっかけに制作も受注するようになったケースが多いように思います。
そこでもし「じゃあデザイナーを雇って制作事業を立ち上げよう」と考えれば、人材育成や業務マニュアルの作成、制作環境の設備投資などにコストが掛かります。
しかしすでに制作ノウハウを持っている会社にアウトソーシングできれば、その部分のコストを削減できるだけでなく、品質の高いものを顧客に提供することができます。
組織のスリム化と業務効率化を図れる
多くのことを自社内で完結させようとすれば、その分だけ組織の構造が複雑になります。
そうなるとどこに無駄があるのか分かりづらくなり、経営判断にも影響が出てきます。
アウトソーシングを活用すれば自社内の組織のスリム化され、それに伴い業務の効率化が可能になります。
また専門業者にアウトソーシングすることで、より品質のいいものを、より短い時間で生産することが可能になります。
専門業者は過去にいろいろなケースを経験しており、また技術も高いところが多いです。
自社内に専門部署を立ち上げるとなれば、やはり実務的な部分では専門業者には敵わない場合が多く、同等のレベルまで育てるにはかなりのコストが掛かることを覚悟しなければなりません。
繰り返しになりますが、中小企業・個人事業主の経営資源には限りがあるので、それをいかに重要な業務に集中させるかがポイントになります。
将来的に自社の競争力強化につながるのであれば投資する価値はありますが、そうでないならアウトソーシングした方が自社にとっても顧客にとってもメリットが大きいことになります。
コストを抑えられる
人件費は一般的に、売上や利益に関わりなく一定のコストが掛かる「固定費」と呼ばれるものです。
しかしアウトソーシングすれば、必要なときに必要な分だけ業務を委託することができるので、人件費を「変動費」化することができます。
また専門性の高い人材を育成するには相応のコストが掛かりますが、もし育てた人材が会社を去ってしまうようなことがあれば、結構痛い損失となってしまいます。
そうしたリスクを考えると、自社で人材を育成することなく専門性の高い人材を、必要なときにだけ活用できるのはアウトソーシングの大きなメリットと言えるでしょう。
アウトソーシングのデメリット
続いて、アウトソーシングのデメリットについて見ていきます。
ノウハウを蓄積できない
アウトソーシングした場合、その業務に関するノウハウを自社で蓄積することはできません。
そのため、こちらから受託企業への指示なども一定のレベルで留まってしまい、それ以上の品質向上が難しくなります。
また何らかの理由で受託側企業が事業撤退や倒産などした場合、自社から顧客へのサービス提供が滞ってしまうリスクもあります。
そうしたリスクに備えて、最低限の情報は把握しておくことが大切です。
品質をコントロールできない
こちらから指示を出したとしても、実際に業務にあたるのは受託企業です。
そのためアウトソーシングした業務については、品質の管理が難しくなります。
特に取引を始めて日が浅い場合にはコミュニケーションがうまくいかないことも多く、こちら側の意図が受託側に十分に伝わらないこともあります。
また逆に、こちら側の知識不足で受託側の意図が理解できないというケースもあります。
その意味でも、(上記と重複しますが)アウトソーシングする業務に関する最低限の知識は持っておくようにしましょう。
トラブル時の責任の所在があいまい
うまく業務が回ればコスト削減や効率化などメリットの大きいアウトソーシングですが、納期遅れや不良品などのトラブルが発生した場合には、その責任の所在があいまいになりがちです。
トラブルの発生には様々な理由が考えられるので、その責任の所在がどこにあるのかもケースバイケースです。
しかし実際には、委託側が受託側に責任を押し付けることがよくあります。
具体的には、委託側が必要な資料の提供を怠ったにも関わらず、その遅れの責任を受託側に押し付けたり、指示が適切でなく顧客の要望に沿ったものを納品できなかったときに、受託側に無償で対応を迫ったりというものです。
業務をアウトソーシングする場合、委託する側にも必要な資料や情報を用意する責任はあります。
委託側と受託側では、どうしても発注する方が立場が上になりやすいですが、自社の顧客向けに、自社にはない専門的なノウハウを提供してもらっているということは忘れないようにしたいです。
コストパフォーマンスの悪化
自社にノウハウがない業務をアウトソーシングすることでコストを削減できるわけですが、自社に十分なノウハウがある場合には、逆に様々な面でコストが高くなるリスクがあります。
アウトソーシングのメリットは、自社よりもノウハウのある専門業者に委託するか、重要度の高い業務に集中するためにそうでない業務を委託するからこそ生まれます。
しかし自社よりもノウハウを持っている業者であれば、その分だけ費用が高くなるのが自然ですし、重要度の低い業務を委託するにしても、もし受託側の練度が低ければ、お金以外のところでコストが掛かってきます。
そのためアウトソーシングをする際には事前に十分検討し、目的と期待できるメリットを明確にしておくことが大切になります。
セキュリティリスクが高くなる
外部の業者に委託する際、業務に必要となる重要な情報を渡すケースがあります。
その中に顧客の個人情報などが含まれていて、万が一にでも外部業者から情報が漏洩すれば取り返しのつかないことになります。
また外部業者で業務を進めてもらうために、できれば社外に出したくないような情報も渡さなければならないこともあります。
そういうケースでは、たとえ機密保持契約を結んでいたとしても、少なからず情報漏洩のリスクがあることは認識しておくべきでしょう。
どこをアウトソーシングするか、見極めが大切
以上、中小企業・個人事業主がアウトソーシングするメリットとデメリットについてまとめてみました。
現実問題として、リソースの関係からしても中小企業・個人事業主はどこかしらの業務をアウトソーシングせざるを得ません。
重要なのは、どの業務をアウトソーシングして、どの業務を自社で行うかを見極めることです。
言い換えれば、どんな分野のノウハウを自社で蓄積すべきなのか、将来のビジョンを重ね合わせながら検討することが大切だということになります。