紀元前の古代地中海世界で生まれた伝統技法「截金(きりかね)」と、天然の鉱物顔料を原料とする岩絵具による「日本画」を融合させ、独自の作品を制作されている截金師・日本画家、並木秀俊様の公式サイトを制作いたしました。
会社設立のタイミングに合わせ、作家としての活動や作品の魅力を国内外へ発信するための公式サイトとしてご依頼いただいたプロジェクトです。
ご依頼の経緯・ご要望
会社設立に伴い、公式サイトを新たに公開したいとのことで、当サイトからお問い合わせをいただきました。
ご要望としては、作品の世界観に調和する洗練されたデザインであること、そして作家としての品格やブランドイメージを損なわないサイトにしたいという点が挙げられました。
また、ご相談当時は「並木秀俊」と検索しても第三者のWebサイトが上位に表示される状況だったため、指名検索で公式サイトやSNSが上位に表示される環境を整えたいというご要望もいただきました。
ご提案・施策
本プロジェクトでもっとも時間をかけて検討したのは、「認知拡大」と「作家のポートフォリオ」という二つの役割をどのように両立させるかという点です。
初めてサイトを訪れる方にとっては、まず作品に惹かれ、その後に截金という技法や作家自身、制作への想いへと興味を深めていく導線が自然です。一方で、ポートフォリオサイトである以上、作家が伝えたい思想や世界観が最初から感じられる構成であることも欠かせません。
このバランスについては制作終盤まで試行錯誤を重ね、クライアントとも何度も意見交換を行いながら現在の情報設計へとたどり着きました。
アート作品は、一般的な商品やサービスのように機能や価格で比較されるものではありません。作品が生まれた背景や制作に込められた想い、作家の理念や歩みといった「コンテキスト(文脈)」こそが作品の価値を形成します。
そのため、本サイトでは購入を強く促すような構成ではなく、作品や作家への理解を深めてもらうためのコンテンツづくりを重視しました。
また、掲載する作品はすべて一点物であり、実物の質感や岩絵具の繊細な色彩、截金ならではの金線の輝きをオンラインだけで完全に伝えることには限界があります。そのためWebサイトはあくまでも認知と信頼形成の入口と位置付け、最終的には個展や展覧会など、実際に作品を鑑賞できるリアルな場へつながることを意識した設計としています。
サイト全体も、展示会などで並木様を知った方が、作品の世界観や制作理念、これまでの活動をより深く理解できる受け皿となることを目指しました。
設計・制作について
制作にあたっては、まず截金や日本画について理解を深めることから始めました。
ご提供いただいた画集をはじめ、関連書籍や資料を読み込み、技法や歴史、作品の特徴をリサーチしたうえでサイト全体の構成を設計しています。同時に、公開後の運用を見据え、更新が必要となるコンテンツを洗い出し、CMSで無理なく更新できる仕様についても並行して検討しました。
デザインでは、ファーストビューだけでも5案をご提案し、ヒアリングを重ねながら作品の魅力を最も引き立てられる方向性へブラッシュアップしています。
作品写真については、ページ表示速度と画質のバランスに特に苦心しました。並木様の作品は、極めて細い金線や岩絵具による繊細な質感が特徴です。その魅力を損なわないよう、可能な限り高画質を維持しながら最適な画像設計を行いました。
また、作品ごとに見せ方を調整し、特に印象的な作品は表示サイズや配置を工夫することで自然と視線が集まるレイアウトを採用しています。
デザイン全体は作品を主役にするため極力ミニマルにまとめていますが、それだけでは作品が持つ緊張感や奥行きを十分に表現できません。そこで、スクロールに連動したモーションやフェード、ぼかし、透過などの演出を取り入れ、静かな中にも空気感や余韻を感じられる表現を目指しました。
さらに、Webサイト掲載用と個展・展示会で上映するプロモーション映像の2種類を制作しました。映像制作は、農林水産省や国際連合関連イベントなどで受賞歴を持つ映像クリエイター・室様にご参加いただき、作品の美しさだけでなく、截金という技法や制作工程の魅力まで伝わる映像に仕上げています。
ディレクションでは用途や目的のみを共有し、構成や演出については専門家である室様にお任せしました。専門領域は専門家に委ねることで、期待以上の成果につながったプロジェクトだったと感じています。
公開後について
公開後は、当初の目的の一つであった指名検索についても順調に成果が現れ、比較的早い段階で公式サイトや関連SNSが検索結果の上位に表示されるようになりました。
さらに、公開初期から質の高い被リンクを獲得できたこともあり、サイトの運営期間に対してアクセス数や認知度は良好に推移しています。
一方で、作品数に対してテキストコンテンツはまだ十分とは言えず、SEOや作品理解の観点では改善の余地があります。そのため現在は、作品が生まれた背景や制作に込めた想いなど、作家ご本人にしか書けない一次情報を継続的に発信していただくことをご提案しています。
アート作品は、その背景や物語を知ることで見え方が大きく変わります。だからこそ、Webサイトも単なる作品一覧ではなく、作家と作品の価値を長期的に育てていくメディアとして運用していただけるようサポートを続けています。