「Webサイトには『目的』があることが重要」という話はよく聞きますよね。
しかし実際には、特に明確な目的があるわけではなく、“ただ何となく”作られたサイトがWeb上にはあふれています。
そしてそのすべてが、コストばかりかかり何の収益ももたらさない“お荷物”です。
今回は、Webサイトを公開・運営する上でなぜ「目的」が大切なのか、そして目的もなく立ち上げたWebサイトがどうなるのか? についてお伝えしていきたいと思います。
目的のないWebサイトは“お荷物”になる
20年くらい前なら、Webサイトを持っていること自体が会社にとってステータスになりました。
そのため、当時は作る方も依頼する方もWebサイトの目的を重視することなく、ただ何となく情報をまとめて見栄えよくデザインして公開しておく、というようなものが一般的でした。
しかし誰もが手軽にWebサイトを作れるようになった現在においては、持っているだけでは会社にとってほとんど意味がなくなりました。
それどころかサーバーやドメイン、外部に保守管理を委託している場合には毎月数万円~のコストが掛かります。
しかもサイトに目的がないということは、どのような方針で運営するかというのが明確でないということであり、そうなればWebサイトから成果が生まれることはありません。
そもそも目的がないので、何をもって「成果」とするのかもハッキリしません。
つまり、コストばかり掛かって何の成果も生み出さない“お荷物”になってしまうわけですね。
目的を持つことで、Webサイトが資産に生まれ変わる
しかし、Webサイトに目的があればどうなるでしょう?
目的があれば手段が決まり、その手段に沿って実行することで結果が手に入ります。
その結果を分析・改善することで、成果を得ることができるわけです。
しかもWebを活用することの最大のメリットは「レバレッジ」です。
オフラインと同じ作業量なら、オンラインの場合は何十倍・何百倍もの成果を手にすることも可能になります。
実際に、Webを活用することで個人が企業レベルの成果を出すことができるようになってきました。
分かりやすいのがYoutuberですが、彼らの中には動画から発生する広告収入で毎月何百万円、何千万円という収益を得ている人もいます。
またブロガーやアフィリエイターの中にも、ブログなどのWebメディアに掲載した広告から大きな収益を得ている人がいます。
ポイントとなるのは、一つの動画・記事がたくさんの人にリーチするということです。
例えばオフラインでの営業活動であれば、一人の営業パーソンが一度に相手にできるのは1件だけです。
しかしWeb上のコンテンツに営業パーソンのような役割を持たせることができれば、同時に、しかも休みなく何件ものセールスが可能になるというわけです。
もちろんWebサイトの目的は様々ですが、大切なのはWebの特性を理解し、目的を達成するためにそれをどのように活用するかを考えて運用していくことです。
そうすることで、コストが掛かるだけだったWebサイトを「資産」に生まれ変わらせることも可能になってくるのです。
Webサイトの目的としてよくあるものは?
とはいえ、「これまでサイトの目的なんて気にしたことないよ」という人には、どんな目的を設定するべきかイメージが付きにくいかもしれません。
ということで、Webサイトの目的としてよくあるものをいくつか挙げてみたいと思います。
売上アップ
法人・個人問わず、ビジネスをしている人のWebサイトの目的として一番多いのが、「売上アップ」です。
そして、Webサイトを活用して売上をアップさせるにはどうすればいいのか? といえば、「集客と販売」です。
自社の商品・サービスを必要としているであろう人を集めて、販売へつなげる。
当たり前のことを言っていますが、Webサイトでこれをしようとするときに大事になるのが、集客のためのコンテンツと販売のためのコンテンツを分けて考えることです。
一つのコンテンツに複数の役割を持たせるのは、不可能ではありませんが難しいです。
それよりも、集客用コンテンツで出会った人を販売用コンテンツに案内するというような流れを作ってあげる方が、イメージしやすいですしメンテナンス性もいいです。
認知度向上
認知度向上とは「どんな会社で、どんなサービスを展開しているか?」というのを、より多くの人に知ってもらうことです。
認知度向上を目的としたWebサイトでは、会社や商品・サービスの強みや魅力などの情報を、分かりやすく伝えることが大切になります。
とはいえ、何の関係もできていないユーザーに押し売りのように「自社の魅力は……」とアピールしてもウザがられるだけです。
矛盾するようですが、認知度向上を目的としたWebサイトでは、自社の魅力を伝える前に「ユーザーにとって有益な情報」を提供するのが効果的です。
対価を払うことなく有益な情報を提供されたユーザーは、あなたに対してポジティブな印象を持ちます。
そういう経験を二度、三度、…… と繰り返すことで、ユーザーの中であなたに対する親近感が育っていきます。
そうした関係ができた上で、「私たちなら、あなたの問題を解決することができますよ」と自社の強み・魅力を伝えてあげるわけです。
なお実際のサイト設計では、自社の強みを伝えるタイミングを、こちらでコントロールできるケースは多くありません。
ほとんどの場合は、有益な情報発信を継続することでユーザー側から見つけてもらい、「どんな会社(商品)なんだろう?」と興味を持ってもらうのを待つことになります。
ブランディング
- コーヒーじゃなくて「スタバ」が飲みたい
- ラップトップじゃなくて「Apple」がほしい
とユーザーに選ばれるようになる、つまり「顧客をファン化する」ことです。
「ブランド・ロイヤリティ」という言葉がありますが、これは「あるブランドに対する顧客の忠誠心」などと訳され、会社や商品・サービスに対する信頼感を指します。
ブランディングに成功すると、他に替えがきく状態だったとしても、ユーザーは自社を選んでくれます。
こうした信頼感の構築は認知度向上の先にあると考えることができ、まずは有益な情報発信によってユーザーの認知度と親近感を高めていくことが効果的です。
その上で
- 自社の理念に共感してもらう
- 商品・サービスを利用してもらう
などの経験を通して、ユーザーの中で信頼感が育っていくわけです。
またブランディングを考える上では、デザインの役割も大きくなります。
顧客に持ってもらいたいイメージをデザインに落とし込むことで、
- 憧れ
- 高級感
- 優越感
- 安心感
などのブランドイメージを構築することに役立ちます。
コスト削減
Webサイトを活用することで、コストの削減を図ることもできます。
顧客から頻繁に寄せられる質問をFAQという形でまとめて公開しておくことで、電話やメール対応に掛かる人的・時間的コストを削減できます。
また先ほども言いましたが、Webサイトで集客・販売ができれば、営業コストを削減することにもつながります。
実際、Webをうまく活用している会社には、営業パーソンをまったく雇わずに100%オンライン経由での受注というところもあります。
コスト削減を目的としたWebサイトを構築する場合、やはりレバレッジの効く分野を集中的に作り込み、さらに可能な範囲で自動化する考え方が大切になります。
つまり上で言ったFAQのような、1の作業で10のリターンが期待できるものをWebサイトのコンテンツにしていくわけです。
大企業のWebサイトなどで、問い合わせたい内容によって問い合わせ窓口が振り分けられていたり、利用しているサービスによって案内されるコンテンツが変わったりという作りのものがあります。
このような感じで、元々は人が個別に対応していた作業を、Webサイトを作り込むことで自動化させることが可能となるのです。
- すべての目的は売上アップかコスト削減に行き着く
- 「認知度向上」や「ブランディング」などの目的をさらに突き詰めていけば、それらはすべて「利益の拡大」に行き着きます。
利益を拡大させるには、「売上アップ」か「コスト削減」しかありません。
そのためこの2つは、すべてのWebサイトの根本にある目的であると言えます。
これはビジネスのためのWebサイトに限らず、趣味など非営利のものでも同じことが言えます。
例えばサークルや同好会などのサイトであっても、新規参加者を集めたり、メンバー間での情報共有をしたりという場合にコストが掛かってきます。
そのコストを削減する選択肢の一つとして、Webサイトの活用が考えられるわけですね。
Webサイトの目的を果たすにはどうすればいい?
Webサイトには「目的」が大切、という話をしてきました。
それでは目的を果たすためには、どのようなアプローチでWebサイトを制作・運営していけばいいのでしょうか?
ここでは絶対に外せないポイントに絞って、いくつかお伝えしていきます。
ターゲット・ペルソナの設定
Webサイトの目的が決まったら、まずはじめにやること。
それが、ターゲットとペルソナの設定です。
というところから、
- 年代
- 性別
- 職業
- 年収
などの情報を組み合わせてターゲットを絞り込んでいきます。
また最近では、ライフスタイルが多様化しています。
例えば同じ「30代(年代)・男性(性別)・ITエンジニア(職業)」だとしても、ある人はサラリーマンとして働いているかもしれませんし、またある人はフリーランスとして働いているかもしれません。
この2人はターゲットとしては同じところに分類されるかもしれませんが、おそらく考え方や価値観などの面では違いがある可能性が高いです。
こんな感じで、ターゲットを設定するだけでは、戦略を立てるのに限界があるケースが増えてきたわけです。
そこで効果的なのが、ペルソナです。
ペルソナとは、ターゲット設定のときの性別や年齢などの情報と合わせて、
- 趣味
- 価値観
- 休日の過ごし方
- 住んでいる場所
- 家族構成
- よく利用するSNS
などの個人的な情報や内面的な要素まで掘り下げて、顧客の人物像を作り上げるものです。
ちょっと乱暴な言い方ですが、「ターゲットを、さらに「一人の人物」として浮かび上がってくるまで絞り込んだものがペルソナ」というようなイメージです。
ユーザの求めているコンテンツ
ターゲット&ペルソナの設定ができたら、その人(=ユーザー)が「どんな悩みや問題を抱えているのか?」というのを探っていきます。
もちろんそれらの悩み・問題は自社商品によって解決できるわけですが、そこから派生する疑問や不安などへの理解を深めていくことがWebサイトで成果を出すためには大切になってきます。
なぜなら、ユーザーの悩み・不安などを理解し、それを解決できる情報をコンテンツとして提供することで、サイトへの流入経路を作ることができるからです。
そうしたコンテンツをより多く作成できれば、その分だけ流入経路を増やすことにつながります。
よくSEO対策なんかの話で、「キーワードに合わせてコンテンツを作ることが大事」ということが言われますよね?
でもそれよりも前に、ユーザーのことを理解している必要があります。
ユーザーのことをよく知らないということは、その人が何を求めているのか、どんな悩み・問題を抱えているのかを把握できていないということになります。
その状態で、果たして適切なキーワードをピックアップすることができるでしょうか?
もちろん、パッと思いつくものはいくつかあるでしょう。
でも自分がすぐに思いつくということは、多くのライバルも思いつくということです。
そうなれば、そのキーワードでのSEO難易度は高くなり、サイトへの流入経路としてはあまり期待できません。
しかしユーザーの悩みや不安を理解していれば、他者が見つけられないキーワードを探し出せる可能性が高まります。
そのキーワードに合わせてコンテンツを作ることで、ユーザーの問題を解決すると同時に、ライバル不在の流入経路を確保できるわけです。
ユーザー導線や使いやすさを意識する
Webサイトをビジネスに活用しようという人であれば、「Web集客」とか「リスティング広告」などの言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。
それくらい集客に対する意識は、多くの人が持っています。
しかし集客のあと、つまり「ユーザーにサイト上で何をしてほしいのか?」ということについては、意外と気にしていない場合があります。
当たり前ですが、Webサイトに集客しただけでは成果は出ません。
そこからユーザーに商品を購入してもらったり、お問い合わせしてもらうことではじめて、収益が発生するわけですよね。
そのため、サイト上でどのような行動をしてほしいのかという「ユーザー導線」を意識して、ページ上のコンテンツを配置してあげることが大切になります。
たとえばですが、もしユーザーが商品を購入したいと思っても、購入ボタンが見つからなければどうしようもありません。
また、お問い合わせをしようとフォームの項目を埋めて送信ボタンをクリックしたのに、不具合が原因でメールを送れなかったりすれば機会損失するだけでなく、ユーザーにネガティブな印象を持たれてしまいます。
さらに言えば、フォームの入力項目が異常に多かったり、答えにくい内容が必須項目になっていたりすれば、それだけ問い合わせへのハードルが高くなることになります。
逆に言えばそこで購入確率の高いユーザーのみをフィルタリングすることもできるわけですが、問い合わせをもらった後に関係を構築するチャンスを自分から捨てに行くことにもなりますので、事前に検討が必要でしょう。
こんな感じで、
- ユーザーにとってほしい行動
- その行動をとったときの快適性
などから、ユーザー導線やユーザビリティ(使いやすさ)を考えていきましょう。
スマホ対応(レスポンシブWebデザイン)
Googleは2018年3月末から、モバイルファーストインデックスに移行しました。
これはWebサイトの評価がPC用ページではなくスマートフォン用ページを基準に行われるというもので、スマホの利用がPCを上回っている現在の時流を反映したものです。
「Webサイトを作る」というと、どうしてもPCでの表示をメインに考えてしまいがちですが、現在では「スマートフォンでどのように表示されるか?」の方がより重要になってきています(スマホファースト)。
PCでの閲覧を想定して作られたWebサイトをすでに持っているなら、別途スマホ用サイトを制作するというのも選択肢の一つではあります。
しかしメンテナンス性などを考えれば、一つのサイトでPCにもスマホにも対応できるレスポンシブWebデザインがおすすめです。
またスマホでサイトを利用する場合には、PCとは勝手が違うこともあります。
分かりやすいところだと、PCではマウスホバー(マウスカーソルを要素の上に乗せる)という動作があります。
そのためPC用サイトでは、マウスホバー時にボタンの色を変えたりアニメーションをつけたりして「そこをクリックできる」ということをユーザーに伝えることができます。
しかしスマホではマウスホバーという動作がなく、パッと見て「それがボタンである」とユーザーに伝わらなければなりません。
また操作が指で行われるため、ボタンやテキストリンクがあまりに小さいとクリックできなかったり、誤クリックの原因となります。
そうしたことに配慮し、「使いやすく・伝わりやすい」サイト設計をすることが重要になってきます。
更新やメンテナンスのしやすさ
Webサイトで成果を出すには、有益な情報を提供することが重要と言いました。
そして情報の有益性を保つためには、情報の鮮度や正確性が大切になってきます。
どんなに悩みを解消できる情報であったとしても、
- 方法論が古くて今の時代に合わない
- 新しく判明した研究結果が反映されていない
- 新しく施行された法律で規制されている
などで実用性が乏しければ意味がありません。
そのため、継続的な更新やメンテナンスというのは必須になります。
ところがそうした作業に特別なスキルや必要だったり、手順が恐ろしく複雑だったらどうでしょう?
おそらく高い確率で、更新が滞ってしまいますよね。
そうならないよう、Webサイトの制作段階で更新作業を補助するような機能の実装を検討しておくとよいでしょう。
具体的には、
- テンプレート化できそうなところはフィールドを設けて入力できるようにしておく
- 時系列ではなく重要度などに応じてコンテンツの並べ替えができるようにしておく
- リンク切れなど問題があれば自動で検出されるようにしておく
などです。
必要となる作業をできるだけ簡略化・自動化しておくことで、よりストレスなく運用ができるようになります。
まとめ:Webサイトは目的から生まれるのが本来の形
以上、Webサイトの目的についてのお話でした。
Webサイトは、目的から生まれるのが本来あるべき形です。
つまり「Webサイトを持ちたい」というところからではなく、「売上をあげたい」「営業コストを下げたい」などの目的が最初にあって、その解決手段としてWebサイトがあるということです。
とはいえ実際には、目的と手段が逆転してしまっているケースは少なくありません。
しかしどんな状態だとしても、そこから改善していくことは不可能ではありません。
- 自社のビジネスにおいて解消したいことは何か?
- それをWebサイトを活用することで解消できないか?
というところから、Webサイトの目的を改めて考えてみるのもいいかもしれません。