中小企業や個人事業主が事業の成長戦略を考える際、とてもシンプルで使いやすいフレームワークがあります。
それが、経営学者アンゾフの提唱した「成長ベクトル」とか「アンゾフ・マトリクス」と呼ばれるものです。
アンゾフの成長ベクトルでは「製品」と「市場」の2つを軸に、事業をどの方向に成長させるかという戦略を考えます。
アンゾフの成長ベクトルで導き出される4つの戦略パターン
アンゾフの成長ベクトルでは「製品」と「市場」の2つを軸に、さらにそれぞれを「既存」と「新規」に分類し、それらを掛け合わせることで4つの戦略パターンが導き出されます。
市場浸透戦略
既存の商品・サービスを既存の市場で売上を拡大させよう、という戦略です。
顧客一人一人の購入頻度を上げる、既存の市場で顧客数を増やす、付随サービス(アフターサポートや保証など)を見直して単価を上げるなどの方法が考えられます。
言葉通りですが、「市場に浸透させる」ことを考えるので、広告宣伝により認知度を上げるのも市場浸透戦略の一つです。
新製品開発戦略
新しい商品・サービスを既存の市場に投入する戦略です。
Appleが継続的にiPhoneの新製品を発売したり、インスタントラーメンやアイスクリームなどで定期的に新しい味が発売されるといったケースは、この戦略に分類されます。
新製品開発戦略を取ると、既存顧客との関係が深まることになります。
iPhoneの例が分かりやすいですが、継続的に新製品を開発することで、顧客は「次はどんなのかな?」と発売を楽しみにするようになります。
それを繰り返すことで顧客の関心はどんどん強くなり、ファン化されるわけですね。
またモデルチェンジによる買い替え需要を狙うのも、新製品開発戦略の一つです。
新市場開拓戦略
新しい市場に、既存の商品・サービスを投入する戦略です。
業務用の調味料や洗剤を家庭用にパッケージして販売するようなケースは、これに当てはまります。
また新市場とはセグメントだけでなく、地理的な要因も考えられます。
コンビニが地方に進出したり、自動車メーカーが海外進出するのも新市場開拓戦略です。
そうした展開はスケールメリットを狙えるだけでなく、既存のノウハウを適用しやすいというメリットもあります。
多角化戦略
新しい商品を、新しい市場に投入する戦略です。
4つの成長戦略の中でもっともリスクの高い方法ですが、その分リターンも大きくなる可能性があります。
デジカメの普及でフィルムが売れなくなった富士フイルムが、技術を活かして医療・化粧品分野に参入したケースが多角化戦略の好例と言えるでしょう。
リスクの高い多角化戦略ですが、既存ビジネスとの相乗効果を発揮できる分野を選択することで、リスクを小さくすることが可能になります。
- 既存の生産設備や物流経路や倉庫などを共有できないか?
- 既存商品と同じ手法、同じ場所で販売できないか?
- これまで培ってきた技術やノウハウを活用できないか?
などを考えることが、多角化戦略のでは重要となります。
まとめ
以上、アンゾフの成長ベクトルについてお伝えしました。
非常にシンプルなフレームワークですが、アンゾフの成長ベクトルを活用することで意外な成長戦略や経営資源の活用法が見つかることがあります。
またシンプルであるがゆえに、中小企業でも個人事業主でも規模を問わず活用することができるもの大きなメリットの一つです。
とはいえ、そのためには自社の強み・弱み、業界動向や経済情勢など自社を取り巻く環境についても把握しておく必要がありますので、SWOT分析と合わせて活用してみてください。